本のヌードに薫る残り香

著作者:椿昇
出版社:産学社
デザイン:原田祐馬
発行年:2015年

シェルターからコックピットへ 飛び立つスキマの設計学

選者:原田祐馬(UMA Design Farm代表 デザイナー)

『シェルターからコックピットへ 飛び立つスキマの設計学』椿昇(産学社)2015年
 これは内容が濃厚で、読んでいるとわけがわからなくなる本なので(笑)、その感覚を佇まいにも残したいと思いました。この表紙イラストも帯をめくるまで何かわからない謎の生き物。「これが椿さん?」って思う人もいるかもしれません(笑)。ちょっと似てますしね。
 この本の帯やカバーは担当編集者(※末澤)が盛り込みたい情報が多いと頭を抱えていましたが、それをそのまま活かすことがかえって「いろいろ詰まった本」という雰囲気が出ていいと思い、送られてきたテキストをすべて盛り込みました。そのうえで、帯、カバー、表紙とめくるにしたがって、情報量が減るつくりにしたんです。
 この時は、帯、カバー、表紙のデザインを3層のレイヤー状に考えていて、情報は減らすのですが、帯にある情報の一部がカバーに、カバーにある情報の一部が表紙に残るようにしています。いわば、帯の残り香がカバーで薫り、カバーの残り香が表紙で薫る。めくるごとに情報量は減りますから、最終的な本の佇まいとしてはシンプルになっていく。残り香の薫るデザインは、この本で一番ピュアに実践できたと思います。

※内容・肩書きは、執筆当時

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